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# 現代住宅デザインに広がるストランドウーブン竹材の台頭 !['竹フローリング'](https://www.bambooindustry.com/images/mb-hn.jpg) 近年、住宅の内装材として竹材への関心が高まるなか、特に「ストランドウーブン竹材(Strand Woven Bamboo)」が著しい存在感を示し始めている。竹材は古くからアジア地域で身近な素材として使われてきたが、その印象は長らく“軽く柔らかい素材”という限定的なものにとどまっていた。しかし製造技術の進歩と設計思想の変化により、竹の持つ本来の強さと美しさが再評価され、住宅の床材として新たな価値を築きつつある。 ストランドウーブン竹材は、従来の水平積層タイプや垂直積層タイプと大きく異なり、繊維を細かく裂いた後に高圧で圧縮・成形する製法で作られる。この工程により、硬度・耐摩耗性・寸法安定性が大幅に向上し、同時に独特の重厚感を備えた意匠が生み出される。竹材の可能性を最大限に引き出したこの素材は、床材としてだけではなく、建築家やインテリアデザイナーにとっても扱いやすい選択肢となっている。 ## ストランドウーブン竹材が注目される背景 竹材がここまで注目されるようになった理由のひとつは、原料の成長スピードが非常に早い点にある。多くの木材が生育に30年以上を必要とするのに対し、竹は3〜5年で伐採が可能な強健な植物だ。しかも切り株から再生する性質を持っているため、植林を繰り返す必要がなく、山林への負担を減らせる点が評価されている。 また、近年の住宅市場では、無垢材だけでなく高耐久かつメンテナンス性に優れた素材を求める声が増えている。生活スタイルが多様化し、ペットとの暮らしや子育て環境を考慮する家庭が増えるなかで、耐傷性に優れた床材へのニーズが高まったことも後押しとなっている。 ストランドウーブン竹材は、木材JANKA硬度の高いオークやメープル、さらにはブラジリアンチェリーをも上回るレベルの硬さを持つことが多く、傷への強さが評価されている。これはまさに、圧縮成形工程で生み出される竹繊維の密度によるものだ。 ## 製造現場から見る素材の特徴 竹の床材製造に携わっている立場から見ると、ストランドウーブン竹材は製造段階から明らかに従来品とは異なる。まず、竹原料を薄くスライスする工程で“節”の位置や繊維方向を丁寧に整え、強度を損なわないよう注意を払う。裂いた竹ひごは乾燥工程で水分を厳密に調整し、樹脂との含浸率が均一になるよう管理することが最も重要となる。 圧縮工程では温度・圧力・時間の三要素が品質を左右する。例えば圧力が不足すれば、内部の繊維密度が十分に高まらず硬度も不均一になり、逆に過度な圧力は内部応力を蓄積させ、後の寸法安定性に悪影響が出る。細かな調整を重ねながら、竹が本来持つ粘りと弾力を損なわずに最大限の強度を引き出すことが技術者に求められる。 仕上げの研磨工程では、圧縮材特有の高密度な表面を滑らかに整える必要がある。目の粗いサンディングベルトを使うと表面が焼けやすく、逆に細かすぎる番手では時間がかかり過ぎ、生産性が低下する。最適な研磨条件は気温や湿度によっても微妙に変わるため、工場では季節ごとの微調整が欠かせない。 ## デザイン性の幅が広がる理由 ストランドウーブン竹材の意匠は、他の自然素材と比べても個性が際立っている。竹繊維がランダムに組み合わさることで、まるで天然のウッドグレインを大胆に再構成したかのような表情が生まれ、空間に力強さと自然の柔らかさが同時に生まれる。 住宅デザインのトレンドにも合致しており、ナチュラルモダン、インダストリアル、北欧風、アジアンテイストなど、さまざまなスタイルと相性が良い点も支持される理由だ。濃色のカーボン色を選べば重厚感が増し、明色のナチュラル仕上げなら軽やかで開放的な空間に仕上がる。 また、多くのメーカーがマットフィニッシュのUVコーティングを採用しており、木材の質感を生かしながらキズに強い保護膜を形成できる。近年は超低光沢の自然仕上げが人気で、竹材特有の立体感がより感じられる仕様が増えている。 ## 安定性とメンテナンス性の進化 無垢材は湿度の変化で伸縮しやすいが、ストランドウーブン竹材はその密度の高さから比較的寸法安定性に優れている。ただし工場側では乾燥工程の品質管理が不可欠であり、原料竹の含水率、環境、加工タイミングを適切に管理しないとカップ(反り)やボウ(曲がり)が発生しやすくなる。 施工後は一般的な木質フローリングと同様、定期的な掃除と強い水濡れを避けることが基本となるが、日常生活の中では比較的扱いやすい素材に仕上がっている。 一方、非常に硬い素材であることから、施工の際には専門の工具と刃物が必要で、切断時に摩耗が早い傾向がある。これは施工業者にとっては注意点だが、床材としての耐久性の高さを裏付ける特徴でもある。 ## 住宅市場での広がりと今後の展開 住宅市場では、新築だけでなくリノベーション用途でもストランドウーブン竹材への需要が増えている。特に、既存の床材を高耐久なものに交換したいという要望が多く、表面の硬さと多彩な色調を理由にこの素材が選ばれているケースが目立つ。 また、竹材は製造段階での加工が容易で、挽き板タイプ、エンジニアード構造、クリックロック機構など幅広い製品構成を展開できる点も市場ニーズに適している。今後は、ワイド幅・ロングボードのラインナップが増えることで、より高級感のある住宅空間への応用も期待される。 意匠面では、カスタムカラーやブラッシュ仕上げなど、従来の竹では難しかった加工にも対応できるようになりつつある。工場側でも、表面塗装やテクスチャ加工の研究が進み、従来品とは違った表情の製品が登場している。これにより、デザイナーが竹材を選ぶ場面はさらに増えるだろう。 ## 製造技術者として感じる素材の将来性 竹材を扱い続けている視点から見ると、ストランドウーブン竹材は単なる床材の枠を超えた可能性を秘めている。[竹フローリング](https://www.bambooindustry.com/bamboo-flooring/japan-tokyo-osaka.html) 高密度な構造は床材だけでなく、階段材、造作部材、家具用素材としても応用の幅があり、実際に海外ではキッチンカウンターやキャビネットの面材として使われる例も増えている。 竹は繊維のまとまりが強く、切断面の処理やエッジの仕上げで木材とは異なる難しさがあるものの、適切な条件を整えれば安定した仕上がりを得られる。これまで木材が中心だった分野に新たな選択肢を提供できる点は大きな魅力だ。 また、原料の確保が比較的容易で、品質管理が進めば調達の安定性を高いレベルで維持できる点も、メーカーにとって大きな利点となる。 ## まとめに代えて ストランドウーブン竹材は、強度・耐久性・意匠性の三点で優れた特徴を持ち、現代住宅デザインにおける信頼性の高い床材として確固たる地位を築きつつある。技術の進化によって竹材の課題が克服され、建築・インテリアの分野で新しい可能性が開けてきたと感じる。 素材そのものの魅力と製造技術の積み重ねによって、竹の価値はさらに深まり、住宅デザインに柔軟な選択肢をもたらす存在となっている。現場に立つ技術者として、これからの竹材がどのような形で建築空間に取り入れられていくのか、楽しみは尽きない。